綿の栽培

綿はもともと熱帯ないし亜熱帯の植物です。植物学的には「あおい科」のゴシピウム属に属します。芙蓉(ふよう)やハイビスカス、野菜の「オクラ」などと同じ仲間で花のイメージも大変よく似ており、清楚で美しい花を咲かせます。国内での栽培適地は東海、近畿地方より以南。関東以北でも種々の条件や工夫によって栽培は可能なようです。

植える場所、準備

植える場所、準備暑さと乾燥に強く、反対に低温と多湿には弱いので、地植えの場合は日当たりと風通しの良い場所を選ぶ。排水が良好であることも大切。根が深く伸びるので、鉢植えの場合は菊鉢のような底の深い鉢を使う。土は粘土質よりも砂質壌土を用いる。酸性土壌を嫌うので(弱アルカリ性が良い)、種蒔きの1週間前までには石灰をまいて中和しておく。元肥は鶏糞(窒素系肥料)を施すと良いが、やり過ぎに注意する。

種蒔き:4月下旬~5月

種蒔き前日から一晩水に浸してから播く。土は種が隠れる程度に薄くかける。丁寧に深く植えすぎるとかえって失敗するので、土の上に種を置きその上から土を薄くかけるような感覚で植えると良い。時期は平均気温が15℃の頃が目安。およそ5月上旬~中旬が適期。地植えの場合は幅70~90cmくらいの畝に40~60cm間隔ぐらいに2、3粒ずつ蒔き、本葉が2、3枚となった頃に元気のいい株を1本残す。鉢植えの場合も2、3粒を播き、後は同様に間引きする。ポットを用いる場合は発芽後10日くらいまで(本葉が1、2枚の頃)に移植する。根が張ってからでは失敗することが多い。

水やりと肥料

水やりと肥料発芽後10cm~20cmくらいまで成長すると、それ以降成長が止まったように見える時期がしばらく続く。この期間は根が張る時期で、この時期に水をやり過ぎたり長梅雨にあうと根腐れをおこす。土が乾燥したら水をやる程度で良い。ただし、水が完全に切れると枯れたり成長が悪くなったりするので適度な水やりを心がける。若葉の頃に草木灰をまいておくと肥料になると同時に虫除けにもなる。本葉が2、3枚となった頃に、化成肥料を一握りで2、3株程度に施すと良い。ただし、やり過ぎに注意する。やり過ぎると枝葉ばかりが伸びて花や実のつきが悪くなる。

成長、摘芯

成長、摘芯5月に種を播いた棉は、7月に入り気温が高くなり日光の量が増えると急成長を始める。30cmほどまで伸びた段階で、摘芯(生長点を摘み取る)をおこなうと、葉の脇から多くの芽が出てボリューム感のある棉に育つ。摘芯をしないでもとくに問題はないが、条件によっては1m50cmほどになる(大きくなりすぎる)こともある。必要に応じて支柱を立てる。

病害虫

病害虫病害虫開花前に葉を巻く害虫(ハマキムシ、メイガの類)やハダニの類が発生することが多いので、防除する。市販の園芸用殺虫剤を散布すれば充分に駆除できるが、手で取り除けるのであればそれに越したことはない。

開花:7月~9月

開花開花7月に入り急成長を始めた棉には、気がつくと苞(蕾を包んでいる)があらわれ、やがて美しい花を次々と咲かせ始める。白色ないし黄白色で、時間が経つと薄ピンク色から紅色に変化する。1本の木に紅白の花が咲いている姿を見かけることがあるのはそのためである。花は2日程でしぼんで落ちるが、1本の木が花をつける期間は長く、1ヵ月以上にわたって花を楽しむことができる。なお、棉は水あがりが良いので、切り花、生け花として楽しむこともできる。ただし、切り花にした場合はコットンボールの収穫までは望みにくい。

結実、開絮(かいじょ):8月~10月

結実、開絮(かいじょ)開花後しばらくすると青い桃のような実が出来はじめ、次第にふくらんでいく。これが蒴果(さくか)・蒴(さく)である。蒴果(蒴) は開花後40日~60日ではじけ中から白い繊維(綿、わた)があふれ出す。これがいわゆるコットンボールである。1つのコットンボールは3~5つの部屋に仕切られており、それぞれの部屋には4~8つ程の種が入っている。

綿摘み

綿摘み綿は開花期が長いので、次々と蒴果(蒴)がはじけて白い繊維があふれ出てくる一方で、次々に新たな花も咲き続ける。したがって、はじけたコットンボールから摘んでいく。あまり長くおいておくと雨露で繊維が垂れ下がったり、地面に落ちてしまうので注意する。なお、ある程度まで蒴果(蒴)が大きくなった時点で根こそぎ抜き取り、葉をすべて切り落とし、蒴果(蒴)についている萼(がく)もとって陰干ししておくのも一つの方法。ドライフラワー(コットン・ブランチ)として楽しむことができる。刈り取ってからでも蒴果(蒴)は次々とはじけ出すのでご心配なく。

綿木引き

綿木引き綿は1年草であるため、収穫を終えた後は根こそぎ抜き取ります。これを「綿木引き(わたぎびき)」と呼びます。根がしっかりと張っているため、本数が多くなるとかなりの重労働でもあります。抜き取った綿木は、十分に乾燥させてから畑で焼きます。焼却灰は畑の肥料になります。

木綿庵では毎年12月末日に綿木引きを行っています。

※参考文献
『はじめての綿づくり』財団法人日本綿業振興会監修 木魂社 2007年発行
『コットンの世界』馬場耕一著 財団法人日本綿業振興会 昭和63年発行
『もめんのおいたち』財団法人日本綿業振興会 平成13年発行
「棉(綿)のつくり方」大和高田市「わたづくりセミナー」資料 平成19年

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